「人権教育」と「道徳教育」の違いは何か

「人権教育」と「道徳教育」の違いは ?

  1117日、F市の「人権を考えるつどい」(市・市教育委員会・市人権教育推進協議会主催)に出席した。
 市内の全小・中学校29校からそれぞれ選ばれた29人の児童・生徒の「人権作文」の朗読を聞く集会で、毎年行なわれている。市長が主催者あいさつで述べた通り、確かに「子どもたちが悩み葛藤しながら『人権感覚』を身につけていく姿が読み取れる」作文など、休憩無し・連続一挙29人の朗読に圧倒された。


「‥‥ いっしょにてつぼうをしていた時のことです。その子はさか上がりがとてもじょうずでした。わたしは、なんどやってもできません。友だちはやってみせたり、話したりして教えてくれました。だけどやっぱりわたしはできません。だんだんイライラして、おこり出して、『きいてるだけじゃわからないよ』とどなってしまいました。なんでわたしだけできないのかわからなくて、かってにおこってしまいました。その子はきゅうにかなしそうなかおになって泣きだしてしまいました。

 わたしはハッとして『わるいことを言っちゃってごめんね。』と言いました。すぐにあやまったら友だちはなきやんで、『うん、いいよ』とニコニコしてくれました。ちゃんとあやまれてよかったと思いました。

 つぎの日、その友だちが、『いっしょにあそぼう。』と声をかけてくれました。あんなことがあったあとなのにあそぼうと言ってくれてうれしかったので、『いいよ』と言ってまたあそびました。友だちはニコニコわらっていました。きのうよりすごくたのしかったです。

 いまはもうけんかはしません。やさしいことばをつかうからです。(中略)
 イライラしていてもニコニコしていてもわたしはわたしです。おなじわたしなら、ニコニコのやさしい気もちをいつももっていたいです。」(小二・女子)


朗読最初の女子。小学校2年生でここまで書くのか、と感心した。 

 

 「‥‥二年生の時、休み時間に、AさんとBさんとわたしで、何をしてあそぶか言い合いになりました。

 Bさんとわたしは『すべりだいであそびたい』と言い、Aさんは『ぶらんこであそびたい』と言いました。そのとき、わたしは、Bさんといっしょに『もう二度とあそばないよ』と、Aさんに強い言葉で、言ってしまいました。

 わたしは、少したってからAさんの心をきずつけてしまった、と思いました。Aさんはかなしいだろうな、おこっているだろうなと思いました。後で、わたしは『強く言っちゃってごめんね』とあやまりました。そしたらAさんは『いいよ。もうしないでね』とやさしくゆるしてくれました。わたしは、うれしくなって『ありがとう。もう強く言わないね』と、Aさんとやくそくしました」。

 でも、その後、わたしは、家に帰ってからも、『また、Aさんに強い言葉で何か言ってしまったらどうしょう』と、なやみました。

 次の日、Bさんとわたしであそんでいる時、Aさんが『入れて』と来ました。そしたら、Bさんがまた、『いやだ』と強い言葉でことわりました。Aさんはないてしまいました。‥‥(後略)(小三・女子)。

 

 学校の休み時間、何をしてすごすかをめぐってさえ、子どもたちは争い、口論する。
仕事に多忙でゆとりのない親に遠慮してか、
娘が話さなかったために気づかず、不登校気味になってから娘の異変に心配を始めた20年近い昔の我が家の状況を思い起こして、熱いものがこみ上げた。

  友だちとの関係をはじめ、おじいちゃんおばあちゃん、障害者、外国人など、生活を共にしたり行動を共にする中で感じ、考え、反省し、決意したことなどを素直に(表現などで指導が入っているにしても)綴った「人権作文」。

小学二年生から中学三年生まで学年順の発表だったが、女子限定かと思うほど女の子ばかりが登場し、初めて男の子が登場したのは12番目、小学四年生であった。小学生は19人中男子は3人だったが、中学生は10人中4人が男子だった。発達の仕方の違い、女子の方が早熟、ということか。

作文の中で「人権」という言葉が出てくるのは小学六年生(女子)が最初で、全体でも3編。ちなみに「部落差別」にふれた作文は1編(中二・女子)で、学校の授業で見た映画について部分的に述べたもので、直接体験したことではない。


 「人権作文」の朗読を聞きながら、「人権教育とは何か」「道徳教育とどう違うのか」の思いにかられた。

 主催者あいさつで、市長と人権教育推進協議会長から、ともに「忠恕」「思いやりの心」が説かれたが、「人権教育」=「道徳教育」なのか。
 かつて国の「人権擁護推進審議会」(97年5月発足・99年7月「答申」)においても「人権教育」と「道徳教育」の違いをめぐる論議がむしかえされ、審議をわずらわせたと聞いたことがある。現在の学校現場ではどうなっているのだろうか。

 児童・生徒が書いた「人権作文」のうちから、「優秀」な「作品」を選んで表彰することにも、違和感をおぼえながら会場を後にした。(管理人)

 

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